稲刈りの時期がやってきました。鳥取は自然が豊かで、いたるところで黄金色にかがやく光景を見ることができます。
黄金色にかがやく光景を見ると、稲刈りの時期がきたなと目でも感じることができますが、その稲刈りを始めるタイミング、見極め方などは意外と知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は稲稲刈りのタイミングや見極め方、また稲刈りに欠かせないコンバインについてご紹介いたします!
稲刈りの前の水ぬき(落水)のタイミング
稲刈りに向けて、まずは水抜きのタイミングを見ていきます。田んぼの水を抜くことを“落水”と言います。
稲刈りの時期は大体毎年同じような時期に行っているのでその時期から逆算して考え、稲刈りの約2週間前(時期にして出穂から30〜40日後くらいにあたる)に行います。
田中農場では大体毎年9月10日頃から稲刈りが始まるので、落水は8月の終わりに行っています。仕切り板を外し、水を抜きますが、水はけが悪い場合は溝きり(※)という作業を行って水はけを促していきます。
(※溝きり・・・田んぼに溝を切り、排水溝につなげておく作業のこと)
水を抜くのはこの1回だと思っていましたが、実はこの落水を行う前にもう1回水を抜く作業を行っているのです。それは“土用干し”といって7月中旬に行われています。
土用干しは、穂が出る2週間前、幼穂(ようすい)が育ち始める頃に行う作業で、
土を一度乾かしておくことでコンバインに負担をかけず作業をしやすくしておくことと水がないことで穂に危機感を覚えさせ、子孫を残すスイッチを入れる効果があります。
ずっと水があり恵まれた環境の中ばかりにいると、稲もそれに慣れ、ひ弱に育ってしまいます。また、水が抜けることで土に空気も送り込むことができます。
人と同じように、メリハリが大事なんですね!
そうした作業を経て、いよいよ稲刈りに突入していきます。
稲刈りのタイミング、見極め方は?
稲刈りのタイミングとしては、例年通りの収穫期を目安に、穂の黄金色の色づき加減そして穂から下3分の1の部分の枯れ具合(この部分から枯れてきて、この状態になると水ももう上がってこなくなるのでそれがサインになる)天気を見て最終的に判断していきます。
大体期間にすると穂が出てから約40日〜45日くらいにあたります。
田中農場では田んぼ事業がスタートした当初よりコンバインを導入しての収穫をしています。
4台のコンバインを所有し、2台をメインに使用、1台を予備、小回りのきく小さめの1台で作業を行っています。
田中農場ではお米以外にも様々な農作物を生産していて、それぞれに担当がついていますが、その作物、作業の担当リーダー(水稲リーダー、米リーダーといった具合)を中心に他の担当者も臨機応変に駆けつけ協力し合いながら作業を行っていきます。
稲刈りではコンバインの運転手1〜2名、刈り入れた稲をダンプで運ぶ4〜5人に加え、乾燥には6〜7人といったように分担して進めていきます。
機械の力もかりますが、たくさんの人の力、労力が合わさって初めて出来る作業なのです。
3つの機能を兼ね備えたスーパー農具の誕生と進化
コンバインコンバインと連呼していますが、様々な機械がある中で、どういった定義のものがコンバインと呼ばれているのかと問われるとわからないもので、少し調べてみました。
コンバインの語源はcombinedで、統合された、という意味で、コンバインとは①稲を刈り取る②脱穀する③米とゴミとを選別するというこの三つが合わさったもののことを指します。
全て手作業でやっていた、また機械誕生後も別々の機械でやっていた歴史から考えると、この1台でそれらが担える画期的な機械の誕生は、農作業を飛躍的にスピードアップさせた救世主といえるでしょう。
①の稲を刈り取るという作業の最初の農機具は鎌でした。それから人力刈り取り機に移行し、現在バインダーというものへ進化を遂げました。
②の脱穀は、千歯抜きから足踏式回転脱穀機、そして現在のハーベスタと呼ばれるものになりました。
③の選別する作業は、箕(み)でふるって米とゴミを選別から、唐箕(とうみ)を使い人力で風を起こして選別していき、現在は唐箕の電動式になりました。
こういった具合にそれぞれの農機具で進化を遂げてきていますが、その3つの農具の集合体がコンバインで、群と作業時間や手間が短縮されました。
それぞれの作業の工程やかかる時間、労力を考えると、コンバインの誕生は稲作文化が長い日本で革命的な出来事といっても過言ではないでしょう。
コンバインの歴史
初めてコンバインが誕生したのが今から53年前の1967年。井関農機から販売が開始されました。
これは側面刈りタイプで田んぼの側面から一方向でしか刈り入れができないものだったので、稲刈り前にコンバインが最初に走行する部分を手刈りする必要がありましたが、その3年後、前刈りタイプが販売され、どの方向からも刈れるようになっていきました。
この形態が定着し、現在も前刈りタイプのコンバインが普及しています。
コンバインの登場で大幅に時間や労力が短縮されたことにより、兼業農家という新しい農業の形も誕生しました。日本の農業のあり方が変化していきました。
現在はさらにソフトの技術も合わせられてきており、GPS機能搭載で真っ直ぐに刈ったり、タンク内の籾を排出するために一度作業が中断した場合にはのもとの場所まで戻るのではなく、今度はどこから刈ったら効率がいいか、ということまで考えてくれたりと、ますます作業の効率化が図られたりと、まだまだ進化が止まりません。
こうした技術の発展により、3Kの“きつい、汚い、危険”と言われるほどの日本の農業のあり方が、現在は“稼ぐ、効率化、簡略化”と言われるほど、カタチを変えてきているのです。
担い手がだんだんと少なくなってきて、これからの日本の農業はどうなるんだろうという声が聞かれていましたが、こうした技術者さんや生産者の絶え間ない努力のおかげで日々進化を遂げていっているのです。